目次
はじめに:命を前にしたとき、人はどう動くべきか
捨て猫を見つけたときにまず確認すべきこと
保護直後に行うべき初期対応
健康・衛生管理と隔離の重要性
自治体・保護団体・法的な手続きについて
里親探しと譲渡までの流れ
命と責任──オリーブシッターの視点
まとめ:小さな命が教えてくれること
はじめに:命を前にしたとき、人はどう動くべきか
ある日、街を歩いていて、段ボールの中で小さく鳴く猫を見つけたとする。
その瞬間、胸の奥に湧き上がる「かわいそう」「助けたい」という感情は自然なものである。
しかし、命を守る行動には感情だけでなく、冷静な判断と正しい知識が欠かせない。
捨て猫や野良猫を保護するという行動は、単なる「優しさ」ではなく、
社会全体で命を支える責任ある行動である。
そしてその一歩は、勇気だけでなく、正確な情報と準備によって支えられるべきものである。
本記事では、捨て猫を見つけたときに取るべき行動、保護後の流れ、
そして私たちオリーブシッターが考える「命を預かる」という責任について詳しく解説する。
焦らず、優しさと理性の両方を持って行動してほしい。
捨て猫を見つけたとき、まず確認すべきこと
1. その猫は本当に「捨て猫」か
可哀想に見えても、すべての猫が「捨て猫」ではない。
母猫が一時的に離れているだけのこともあるため、まずは10〜15分ほど静かに観察することが大切だ。
周囲を確認し、母猫が戻ってこないか、近隣に餌皿や猫用ハウスがないかを見てほしい。
もし人の手が入っている気配がある場合、それは地域猫として世話を受けている可能性もある。
周囲に母猫がいないか
人の生活圏(民家や餌皿など)が近くにないか
首輪やマイクロチップの有無
これらを冷静に確認することが、命を守る第一歩である。
2. 安全な場所へ避難させる
道路脇や駐車場など危険な場所にいる場合は、
タオルやキャリーケースなどで静かに保護し、安全な場所に移動させよう。
このとき、素手で抱くと引っかき傷や感染症のリスクがあるため、
布越しで包むように抱くのが望ましい。保護後は、静かで暖かく、暗めの場所に一時的な環境を整えると良い。
初期対応:保護したその日に行うこと

1. 状況を記録し、必要であれば写真を残す
発見時の状況(場所・時間・天候・周囲の環境)をメモしておく。
これは、後で自治体や保護団体に相談するときに役立つ。
もし怪我がある場合や、明らかに衰弱している場合は、状態を撮影しておくと診察時に伝えやすい。
2. 動物病院での診察
保護したら、できるだけ早く動物病院へ行くことが望ましい。
猫は体が小さいため、たった一晩の放置でも命に関わることがある。
病院では以下を確認してもらうと良い。
鼻水・くしゃみが出ていないか
目ヤニや涙が多くないか
体が冷たくなっていないか(特に子猫)
下痢や嘔吐がないか
これらの症状が見られる場合、その日のうちに動物病院へ。
保護猫の多くは栄養不足や寄生虫、猫風邪を抱えていることが多く、
早期診断と治療がその後の健康を左右する。
体重・体温・脱水の有無
ノミ・ダニ・寄生虫の有無
猫風邪や感染症(FIV、FeLVなど)の簡易検査
推定年齢・性別
また、マイクロチップの有無も確認できる。
もし飼い主がいる場合、ここから身元が判明することもある。
3. 水と食事
保護直後は、焦って食べ物を与えるよりも、水分補給を優先する。
特に子猫は体温調整が難しいため、温かい毛布や湯たんぽなどで保温しながら、
猫用ミルク(ペットショップや病院で入手可能)を少量ずつ与える。
人間用の牛乳は下痢を起こす可能性が高いため避けるべきである。
4. ノミ・ダニ・感染症対策
特に注意すべきは「ノミ・ダニ」と「猫白血病ウイルス(FeLV)」「猫エイズ(FIV)」である。
これらは他のペットに感染する可能性があるため、隔離スペースでの一時保護が基本。
動物病院では簡易検査で感染の有無を確認できる。
健康・衛生管理と隔離の重要性
感染症と寄生虫への注意
保護した猫は、一見元気そうに見えても体内に感染症や寄生虫を抱えていることが多い。
特に「猫風邪」「回虫」「条虫」「耳ダニ」「ノミ」は高確率で発見される。
症状が出ていなくても、動物病院で駆虫薬を投与してもらうことが安全である。
猫風邪の初期症状は、くしゃみや鼻水、目ヤニなど軽度であっても、
放置すると肺炎や食欲不振につながる。
命に関わることもあるため、早期治療が鍵となる。
また、感染症(猫エイズFIV・白血病FeLV)は血液検査で確認できる。
結果が陽性であっても、すぐに悲観する必要はない。
室内でストレスを抑えた生活を送れば、長く健康に生きる例も多い。
重要なのは「正確な情報」と「冷静な対応」である。
清潔な環境を維持すること
保護後の環境づくりも命を左右する。
猫は非常にきれい好きな動物であり、清潔なトイレ環境がストレス軽減につながる。
トイレ砂は無香料の紙砂やおから砂など、刺激の少ないものを選ぶとよい。
また、体が汚れている場合でも、すぐに全身を洗うことは避けたい。
低体温やストレスを悪化させる恐れがある。
まずは濡らしたタオルで汚れた部分を軽く拭き取り、体温を保つことを優先する。
ノミが見つかった場合は、市販薬ではなく動物病院で処方された専用薬を使用する。
市販薬の中には、子猫にとって強すぎる成分が含まれているものもあり、命を落とす危険すらある。
自治体・保護団体・法的な手続きについて
猫を保護した際、個人で抱え込まず、公的な相談先に連絡することも重要である。警察へ届け出る場合は「拾得物」として扱われる場合がある。動物は法律上「物」ではないが、所有権という概念があるためだ。
自治体や警察への届け出が必要になることもある。
特に「地域猫」や「所有者不明猫」の扱いは自治体によって異なる。
保健所・動物愛護センター:迷子猫・負傷猫の届出が可能
動物病院:マイクロチップ照会や一時保護相談が可能
保護団体:里親探し・一時預かり・医療支援を行う団体も多い
「どこに連絡していいかわからない」という方は、
まずはお住まいの自治体+“動物愛護センター”で検索すると良い。
正しい窓口に繋がることで、保護猫の未来が確実に広がる。
里親探しと譲渡までの流れ
SNS拡散の注意点
保護猫の里親を探すためにSNSを活用するケースは多い。
しかし、そこにはいくつかの落とし穴がある。
写真の位置情報や自宅の背景などが悪用され、
猫が再び危険な状況にさらされる事例も報告されている。
したがって、写真は背景をぼかすか壁際で撮影し、位置情報は削除してから投稿する。
文章には、発見地域(市区町村まで)、性別、年齢、健康状態を明記し、
誇張ではなく「事実ベース」で書くことが信頼につながる。
譲渡時の基本ルール
里親が見つかった場合でも、譲渡は慎重に行うべきである。
一度飼育を始めた動物を再び手放すことは、猫にとって大きなストレスであり、
再発防止のためにも「終生飼養の意思」を確認することが不可欠である。
譲渡契約書を交わし、本人確認書類の提示を求める。
可能であれば譲渡前に家庭訪問を行い、飼育環境(ペット可住宅・脱走防止策など)を確認する。
これは相手を疑うためではなく、猫の幸せを第一に考えるためのプロセスである。
また、譲渡後も定期的に近況報告をもらうようお願いすると良い。
信頼関係を維持することが、猫の安心にもつながる。
命と責任──オリーブシッターの視点
私たちオリーブシッターは、ペットシッターという仕事を「動物のお世話代行」ではなく、
命と生活を預かる専門職として捉えている。
私たちは、日々のシッティングのなかで、
「飼い主様の安心」と「動物の幸せ」を両立させることを使命としている。
その根底にあるのは、命への敬意と誠実さである。
近年、日本では年間3万頭以上の猫が行政に収容されている。
そのうちの多くは、飼育放棄や繁殖制限不足が原因である。
しかし同時に、民間の保護団体や個人ボランティアの努力によって、
殺処分数は年々減少している。
「拾うこと」はゴールではなく、社会全体で支えるスタート地点である。
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捨て猫を保護する行動は、まさにその理念の延長にある。
命を見捨てないという勇気、そして助けた命を最後まで支えるという覚悟が、
社会を少しずつ良くしていくと私たちは信じている。
保護活動は決して容易ではない。
時間も費用も労力もかかる。
しかし、その経験は人に「生きる力」と「思いやりの深さ」を与える。
動物が安心して眠れる場所をつくることは、人の心にも温かさを灯す行為である。
まとめ:小さな命が教えてくれること
捨て猫を見つけたとき、人は試される。
その瞬間にどんな選択をするかが、命の未来を変える。
保護は勇気の一歩であり、責任の始まりである。
正しい知識を持ち、冷静に行動することで、救える命が確実に増える。
そして、もしあなたが今、保護した命と向き合っているなら、
どうか焦らず、ひとつひとつを丁寧に進めてほしい。
孤独に感じるときは、行政・病院・保護団体、そして私たちのような専門家を頼ってよい。
命を救うことは、社会をあたためる行動である。
一匹の猫が幸せになることで、そこに関わった人の人生もまた豊かになる。
私たちオリーブシッターは、動物と人が安心して共に生きられる社会を目指し、
これからも誠実に、そして静かに行動を重ねていく。
編集・執筆:オリーブシッター編集部
ペットと人が、安心して生きられる世界へ。


